プロジェクト設定を後回しにすると何が起きるか
DaVinci Resolve で新しいプロジェクトを作成したとき、「とりあえず素材を読み込んでから設定しよう」と先に編集を始めてしまうことはよくあります。しかし、プロジェクト設定の一部は「後からでも変えられる設定」と「後から変えると問題が起きる設定」に分かれていて、この違いを知らないまま進めると手戻りが発生します。
フレームレートが素材と合っていないことに気づいたのが編集の終盤だった、カラーサイエンスを途中で切り替えたらグレーディングのノードが崩れた、といった失敗は、受講者からよく聞く話です。最初の5分で正しく設定しておけば防げる問題なので、ここで一度整理しておきましょう。
まず確認すべき「変えにくい設定」と「変えやすい設定」の違い
プロジェクト設定を開くと(メニューバー「ファイル」→「プロジェクト設定」、またはショートカット Shift+9)、多くの項目が並んでいますが、すべてを最初から完璧に設定する必要はありません。優先度を把握することが重要です。
変えにくい設定(最初に確定させる)
| 設定項目 |
なぜ変えにくいのか |
| タイムライン解像度 |
変更するとクロップやポジション調整がすべてズレる |
| タイムラインフレームレート |
変更するとクリップの速度・同期がずれる |
| カラーサイエンス |
変更するとグレーディングのノード・LUTの適用が崩れる |
| カラースペース / ガンマ |
カラーサイエンスに連動して影響を受ける |
変えやすい設定(後からでも問題が出にくい)
| 設定項目 |
補足 |
| 最適化メディアの解像度・フォーマット |
生成しなおせば済む |
| キャッシュ形式 |
キャッシュを削除・再生成できる |
| 自動保存・バックアップ間隔 |
いつ変更してもすぐ反映される |
| レンダリングモード |
書き出しごとに変更可能 |
この分類を頭に入れた上で、各設定を見ていきましょう。
タイムライン解像度とフレームレートの決め方
タイムライン解像度は「撮影素材の解像度」に合わせる
タイムライン解像度は「マスター設定」の最上部にある「タイムライン解像度」で設定します。基本的な考え方は「撮影した素材の解像度に合わせる」です。
| 撮影素材 |
タイムライン解像度 |
| 4K(3840×2160) |
3840×2160 UHD |
| フルHD(1920×1080) |
1920×1080 HD |
| 縦型(9:16)スマホ撮影 |
1080×1920 など縦型 |
ひとつ注意が必要なのは、YouTube向けに4K素材をフルHDでタイムラインを組む「ダウンスケール編集」という手法です。4K素材をフルHDタイムラインに置くと、Resolveが自動でリサイズ処理を行います。処理の重さが変わるため、PCスペックと相談して決めましょう。DaVinci Resolve の推奨PCスペックも参考にしてください。
フレームレートは「撮影素材のfps」が絶対の基準
フレームレートの設定でもっとも重要なのは「撮影した素材のフレームレートに合わせる」という原則です。この点は断言できます。
| 撮影fps |
タイムラインfps |
| 24fps(シネマ風) |
23.976 または 24 |
| 30fps(標準) |
29.97 または 30 |
| 60fps(スロー素材あり) |
59.94 または 60 |
「29.97」と「30」のように整数値と小数値が混在していて迷いますが、多くのカメラが撮影する「30fps」は実際には29.97fpsです。素材の実際のフレームレートを確認(メディアページで右クリック「クリッププロパティ」)してから一致させるのが確実です。
スロー再生を使いたい場合は、スロー素材(60fps / 120fps)とメインの素材(24fps や 30fps)でタイムラインのfpsが違うことになります。このケースではメインとなる最終的な出力フレームレートに合わせてタイムラインを設定し、スロー素材はスピード変更で対応します。フレームレートについてより詳しく知りたい方は、フレームレート(fps)の基礎知識をあわせて読んでみてください。
カラーサイエンスの選び方
2つの選択肢と、それぞれが向いているケース
プロジェクト設定の「カラーマネジメント」タブを開くと、カラーサイエンスとして主に以下の選択肢があります。
| カラーサイエンス |
向いているケース |
| DaVinci YRGB |
手動グレーディング中心、単一カメラ、シンプルに始めたい |
| DaVinci YRGB Color Managed(RCM) |
複数カメラ混在、Log素材、自動色管理を使いたい |
DaVinci YRGB|手動グレーディングの基本
「DaVinci YRGB」は、DaVinci Resolve のデフォルトのカラーサイエンスです。カラーホイール・カーブ・ノードを使ってすべてを手動で操作するスタイルで、カラーグレーディングを自分でコントロールしたい人に向いています。
入力素材の色空間管理は自分で行う必要があるため(Log素材ならLUTや入力色変換を手動で設定)、ある程度の知識が前提になりますが、その分「何が起きているか」がわかりやすく、学習曲線がなだらかです。一般的なYouTube動画やVlogで、主に1台のカメラで撮影するケースではこちらで十分です。
DaVinci YRGB Color Managed(RCM)|自動色管理の恩恵
「DaVinci YRGB Color Managed」は、Resolve Color Management(RCM)を使った色管理モードです。異なるカメラや色空間の素材をプロジェクトに読み込むと、RCMが自動的に入力色空間を検出・変換し、作業色空間に統一してくれます。
複数カメラで撮影したLog素材が混在するような案件では、RCMを使うことでキャリブレーションの手間が大幅に減ります。ただし、RCMの挙動を理解していないとグレーディングの結果が意図しない見た目になることもあり、「なんか色がおかしい」と感じたときにどこで何が起きているかを追いにくくなる面もあります。
初心者の方や単一カメラでのシンプルな編集なら「DaVinci YRGB」で始め、Log素材や複数カメラを扱うようになったタイミングでRCMを検討するのが無理のないステップです。
認定トレーナーとしてカリキュラムを組む中で気づいたのは、カラーサイエンスの選択よりも「最初に選んだカラーサイエンスを最後まで変えない」ことの方がトラブル防止において重要だということです。途中で切り替えると、それまで調整したノードやLUTが意図しない見た目になるため、まず慎重に選ぶよりも「決めたら変えない」を守る方が現実的です。
最適化メディアとプロキシの設定
最適化メディアは「作業中の再生負荷を下げる」仕組み
「最適化メディアを生成」は、オリジナル素材をより軽いフォーマットに変換して再生をスムーズにする機能です。高解像度や高ビットレートの素材を扱うとき、PCのスペックによっては再生がカクつくことがあります。そういった場合に最適化メディアを生成しておくと、編集中の作業が快適になります。
プロジェクト設定の「マスター設定」内にある「最適化メディア解像度」と「最適化メディアフォーマット」で設定します。
| 項目 |
推奨設定 |
理由 |
| 最適化メディア解像度 |
オリジナルまたは1/2 |
フルHD以下なら「オリジナル」でも問題なし。4K素材はハーフサイズも有効 |
| 最適化メディアフォーマット |
DNxHR SQ(Mac: ProRes 422) |
編集に適したイントラフレームコーデック。再生が安定する |
4K素材を扱う場合の具体的な選択肢を整理すると、Mac環境では「ProRes 422」が一般的です。Windowsでは「DNxHR SQ」が互換性・品質のバランスで選ばれることが多いです。どちらも中間コーデックとして実績があります。
PCスペックに余裕があれば最適化メディアを使わずオリジナルで編集できますが、DaVinci Resolve の推奨PCスペックの基準を下回る場合は積極的に活用しましょう。
プロキシとの違いを把握する
「最適化メディア」と混同されやすい「プロキシ」は、用途が少し異なります。
| 機能 |
生成のタイミング |
主な用途 |
| 最適化メディア |
Resolve 内で生成 |
Resolve 内での再生負荷軽減 |
| プロキシ |
外部ツールまたは Resolve で生成 |
モバイル編集・外部共有など |
プロキシ編集の詳しい仕組みと使い方については、プロキシ編集とは何かで詳しく解説しています。
キャッシュ形式と自動保存の設定
キャッシュ形式はレンダリングキャッシュの品質を左右する
カラーページでグレーディング済みのクリップは、「レンダーキャッシュ」として一時保存されることで再生時の負荷が下がります。このキャッシュファイルの形式を「マスター設定」の「ワーキングフォルダ」セクション内、または「キャッシュファイル」設定で変更できます。
| フォーマット |
特徴 |
| DNxHR SQ / ProRes 422 |
バランスが良い。書き出し品質に影響しない中間コーデックとして実績あり |
| ProRes 4444 |
透過チャンネルが必要な合成作業向け。ファイルサイズが大きい |
| 非圧縮 |
最高品質だがディスク消費が非常に大きい |
一般的な用途なら「DNxHR SQ」または「ProRes 422」を選ぶのが無難です。書き出しの最終品質に影響するわけではなく、あくまでも作業中の再生用キャッシュであることを覚えておいてください。
自動保存と自動バックアップは必ず設定する
プロジェクトデータベースの破損やクラッシュによるデータ消失を防ぐため、自動保存と自動バックアップは初日に設定しておくべき項目です。設定場所はメニューバー「DaVinci Resolve」→「環境設定」→「ユーザー」→「プロジェクトの保存と読み込み」です(プロジェクト設定ではなく環境設定側にあることに注意)。
| 項目 |
推奨値 |
理由 |
| ライブ保存を有効にする |
ON |
編集のたびにリアルタイムで保存 |
| プロジェクトバックアップ間隔 |
20〜30分 |
短すぎると書き込み負荷がかかる。長すぎると被害が大きい |
| バックアップの最大数 |
10〜20 |
複数世代を残しておくと、特定の時点に戻れる |
| バックアップの保存場所 |
プロジェクトDBとは別ドライブ |
メインドライブ故障時に備える |
「ライブ保存を有効にする」はONにしておくことを強くすすめます。DaVinci Resolve はデータベース形式でプロジェクトを管理しているため、強制終了やフリーズ時のリスクが一般的なファイル保存ソフトより高い面があります。
プロジェクト設定まとめ:最初に確定させる項目一覧
新規プロジェクト作成直後に設定すべき項目を、優先順位順にまとめます。
| 優先度 |
設定項目 |
判断基準 |
| 必須 |
タイムライン解像度 |
主力素材の解像度に合わせる |
| 必須 |
タイムラインフレームレート |
素材のfpsに合わせる(後から変えにくい) |
| 必須 |
カラーサイエンス |
単一カメラ: DaVinci YRGB / 複数カメラ・Log: RCM |
| 推奨 |
最適化メディアフォーマット |
DNxHR SQ(Windows)/ ProRes 422(Mac) |
| 推奨 |
最適化メディア解像度 |
オリジナルまたは1/2(PCスペックによる) |
| 推奨 |
キャッシュフォーマット |
DNxHR SQ または ProRes 422 |
| 必須 |
ライブ保存 |
ON(環境設定から) |
| 推奨 |
バックアップ間隔・保存先 |
20〜30分、別ドライブ(環境設定から) |
この設定を完了してから素材を読み込むと、あとから「やり直し」が発生するリスクが大幅に下がります。
プロジェクト設定が固まったら、次は書き出し(デリバーページ)の設定も事前に確認しておくと、完成後に慌てずに済みます。書き出しの選択肢と判断基準についてはDaVinci Resolve 書き出し戦略で詳しく解説しているので、プロジェクト設定と合わせて読んでおくと理解が深まります。
初めてDaVinci Resolveを使う方は、DaVinci Resolve 使い方完全ガイドもあわせてご覧ください。プロジェクト設定を含めた全体のワークフローを体系的に把握できます。
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