はじめに
DaVinci Resolveを起動して画面下部を見ると、「Cut」と「Edit」という2つのページが並んでいます。どちらも動画を編集するためのページですが、「何が違うの?」「どっちを使えばいいの?」と疑問に思ったことはありませんか?
結論から言えば、CutページとEditページは競合する機能ではなく、異なる目的に最適化された2つのワークスペースです。どちらが「上位」ということはなく、使い分けることで編集効率が上がります。
設計思想の違いを理解する
Cutページ: 「速さ」を追求した設計
Cutページは、Blackmagic DesignがDaVinci Resolve 16で追加した比較的新しいページです。その設計思想は明確で、「できるだけ少ない操作でカット編集を完了させる」ことに特化しています。
Cutページの特徴的な設計をいくつか挙げてみます。
- デュアルタイムライン: 全体俯瞰と詳細編集を同時に表示
- ソーステープモード: メディアプール内の素材を1本のテープのように連続再生
- スマートインサート: 再生ヘッドの位置に自動で最適な編集を実行
- 簡易トランジション・タイトル: よく使う機能にすぐアクセスできるパネル
これらの機能は、「ニュース映像の編集」「イベント当日の即編集」「大量のクリップからの素材選び」のような、スピードが最優先の場面を想定して設計されています。
Editページ: 「精密さ」を追求した設計
Editページは、DaVinci Resolveの伝統的な編集ワークスペースです。一般的なノンリニア編集ソフトのインターフェースに近く、細かいトリミング、複雑なトラック構成、高度なエフェクト適用に対応する機能が揃っています。
Editページならではの特徴は以下の通りです。
- 多機能なトラックヘッダー: トラックのロック、表示/非表示、出力切替
- インスペクタパネル: クリップの詳細なパラメータ調整
- エフェクトライブラリ: トランジション、Fusionエフェクト、フィルターの完全なライブラリ
- キーフレームエディタ: アニメーションの細密な制御
こちらは「時間をかけてでも高品質な仕上がりを求める」編集に向いています。
機能比較|何ができて何ができないか
主要機能の比較表
| 機能 |
Cutページ |
Editページ |
| 基本カット編集 |
○(高速操作) |
○ |
| マルチトラック管理 |
△(簡易的) |
○(詳細管理) |
| トリミング |
○(シンプル操作) |
○(高精度) |
| トランジション |
○(基本的なもの) |
○(全種類) |
| テキスト・タイトル |
○(クイックタイトル) |
○(Fusion対応含む) |
| エフェクト |
△(限定的) |
○(フルアクセス) |
| キーフレーム |
△(基本のみ) |
○(詳細制御) |
| マルチカム |
○(シンク&カット) |
○(高度な切替) |
| オーディオ調整 |
△(基本レベル・EQ) |
○(詳細ミキサー) |
見てわかる通り、Editページの方が機能は豊富です。しかし、すべての編集でフル機能が必要なわけではありません。Cutページで十分に完結する作業を、わざわざEditページで行う必要はないのです。
タイムラインは共有されている
ここで押さえておきたいのは、CutページとEditページは同じタイムラインを共有しているという点です。Cutページで行った編集はEditページにそのまま反映されますし、逆もまた然りです。
つまり、「Cutページで粗編集 → Editページで仕上げ」というワークフローが自然に成立します。
使い分けの判断基準
コンテンツの種類で判断する
どちらのページを使うかは、編集するコンテンツの特性で判断するのが最もシンプルです。
Cutページが向いているコンテンツ:
- Vlog、日常動画(テンポ重視のカット編集)
- ニュース、報道系(速報性が求められる)
- イベント記録(大量素材からの選択)
- SNS向け短尺動画(シンプルな構成)
Editページが向いているコンテンツ:
- チュートリアル動画(テロップ・エフェクト多め)
- ミュージックビデオ(精密なタイミング調整)
- 企業プロモーション(高度な演出)
- 長尺ドキュメンタリー(複雑なトラック構成)
自分のYouTubeチャンネルでは、Vlog系の動画はCutページで粗編集まで終わらせてからEditページに移行しています。一方、チュートリアル動画は最初からEditページで作業します。テロップやエフェクトの配置が多いので、Cutページでは対応しきれないからです。
編集工程で判断する
もう1つの判断軸は、編集のどの工程にいるかです。
| 工程 |
おすすめページ |
理由 |
| 素材の選別・ラフカット |
Cut |
ソーステープモードで素材を高速チェック |
| 粗編集(構成決め) |
Cut |
デュアルタイムラインで全体を見ながらカット |
| 細かいトリミング |
Edit |
フレーム単位の精密な調整 |
| テロップ・エフェクト追加 |
Edit |
エフェクトライブラリのフルアクセス |
| BGM・SE調整 |
Edit |
オーディオミキサーの詳細制御 |
| 最終確認 |
どちらでも |
好みで選択 |
ショートカットキーの戦略を両ページで使いこなせるようになると、ページ間の切り替えもスムーズになります。
「Cutページは初心者向け」は誤解
プロの現場でもCutページは使われている
「Cutページ=初心者向け、Editページ=上級者向け」という認識を持っている方がいますが、これは誤解です。Cutページはむしろ「速さが求められるプロの現場」を想定して設計された機能です。
報道や配信の現場では、撮影からわずか数分で編集を完了させなければならない場面があります。そうしたスピード重視の編集に特化したのがCutページです。
認定トレーナーとして講座で教える際にも、Cutページの効率性を実演すると「こんなに速くできるんですか」と驚かれることが多いです。初心者が最初に触るページとしてもとっつきやすいのは事実ですが、それは「簡易版」だからではなく「操作がシンプルに設計されている」からです。
両方使えることがアドバンテージ
DaVinci Resolveの強みの1つは、この2つの編集ページを持っていることです。状況に応じて使い分けられるのは、無料版とStudio版の比較で触れているように、DaVinci Resolveならではの柔軟性です。
両方のページに慣れておくと、プロジェクトの性質や締め切りに合わせて最適な編集環境を選べるようになります。
まとめ|要点を行動に
CutページとEditページは「どちらが上」ではなく、それぞれ異なる強みを持つ2つのワークスペースです。
- Cutページはスピード重視の粗編集・素材選別に最適
- Editページは精密な仕上げ・複雑な演出に最適
- 同じタイムラインを共有しているので、両ページ間の行き来は自由
- コンテンツの種類と編集工程の2軸で使い分けを判断する
- 「Cutページ=初心者向け」は誤解。プロの現場でも活用されている
まずは次の動画で、粗編集をCutページ、仕上げをEditページで試してみてください。両ページの感覚がつかめると、編集の引き出しが確実に増えます。YouTuberエッセンシャルエフェクト2のようなエフェクトプリセットも、Editページで組み合わせると演出の幅がさらに広がります。